アルバム解説
Last Update 7/2012

アルバム参加メンバー 表紙に戻る

アルバム収録曲目 ジャケット ビデオ作品 書籍 Live In Japan

1970s
Lou Reed
Transformer
Berlin
Rock 'n' Roll Animal
Sally Can't Dance
Lou Reed Live
Metal Machine Music/ /
Coney Island Baby
Rock'n Roll Heart
Street Hassle
Take No Prisoners
The Bells
1980s
Growing Up In Public/ /
The Blue Mask
Legendary Hearts
Live In Italy
New Sensations
Mistrial
New York
1990s
Songs For Drella
Magic And Loss
Between Thought
/ / /And Expression (Box Set)
/ /
Set The Twilight Reeling
Perfect Night

2000-
Ecstasy
American Poet
The Raven
NYC Man
Le Bataclan '72
Animal Serenade
Hudson River Wind Meditations
Metal Machine Music : Zeitkrazer
The Stone : issue Three
Berlin : Live At St Ann's Warehouse
Lulu

The Velvet Underground
The Velvet Underground & Nico/ /
Nico : Chelsea Girl
White Light/White Heat
The Velvet Underground (3rd)
Loaded
Liva At Max's Kansas City
1969 Live
VU
Another View
LIVE MCMXCIII
Peel Slowly And See (Box Set)
Fully Loaded Edition
Squeeze
Bootleg Series Volume 1: The Quine Tapes

Lulu
Lou Reed and Metallica
2011年 評価 : 7/10
UICR-1093/4 (2011, 2CD, Japan)
図らずして遺作となった、メタリカとのコラボ作品。「ロックの殿堂」での共演をきっかけに当初は過去のルー作品のリメイクという軽いノリでスタートしたのだが、御大がそれで満足するはずも無くここに舞台作品用のLuluのアイディアをぶち込んで完成させた2枚組み大作。ブラック・アルバム以降かなり音楽的フィールドの広がったメタリカとはいえ、かみ合っているのか何だか分からない印象にファンからは非難轟々だったらしいが、ルー陣営からすればしてやったりといったところ。ルーの最期を看取ったのが史上最強のヘヴィ・メタルバンドというのはいかにも。


Berlin : Live At St Ann's Warehouse
2008年 評価 : 9/10
WPCB-10101 (2008, 1CD, Japan)
1973年のアルバム発表から33年の時を経て2006年12月に全曲完全再現されたベルリンのライブ・アルバム。コーラス、ホーン隊完備の上、オリジナル・アルバムに参加していたギタリスト、スティーブ・ハンターを呼び寄せたことからも、原作に忠実なライブ・アレンジを目指していることは明白。ルーはさすがに若き日のやさぐれたムードは微塵もないが代わりに極めて肉厚で説得力のある唄を聞かせてくれる。 73年が「主役」であるなら06年版は「語り部」といったところか。 ベルリンに続いてVUの「キャンディ・セッヅ」、エクスタシーからの「ロック・メヌエット」と地獄の選曲で聞き手に三途の川を渡らせておいて、ラストのスイート・ジェーンでグイっと一気にこの世に連れ戻してくれる感覚は実に痛快である。

・本作品の発起人でもある映画監督のジュリアン・シュナーベルによってライブ映像も劇場公開作品として発表されている。 (DVDリリース済み)


The Stone : Issue Three
(Lou Reed, Laurie Anderson and John Zone)
2008年 評価 : 6/10
TZADIK TZ0004 (2008, 1CD, US)
ニューヨークのイースト・ビレッジにあるライブ・スペース"The Stone"での、ルー(ギター)、ローリー・アンダーソン(バイオリン、シンセサイザー)、ジョン・ゾーン(サックス)の3人による即興演奏を48分22秒収めた限定版ライブCD。固定したしたリズムやメロディーから離れてお互いの間合いだけで進行する演奏は格闘技のような緊張感を生み出している。

・ジョン・ゾーンがディレクターを務めるThe Stoneの公式ページhttp://www.thestonenyc.com/index.html


Metal Machine Music :
Performed By ZEITKRATZER Live
2007年 評価 : 6/10
asphodel ASP3009 (2008, 1CD+1DVD, US)
ドイツの前衛オーケーストラ、ツァイクラツァーによる"Metal Machine Music"の再現ライブ盤(2002年3月17日ベルリンにて収録)。エレクトリック・ギターのフィードバックとテープ・ループにより製作されたMetal Machine Musicを生楽器で再現するアイデアも凄いが明らかに全く異なる楽器なのに紛れも無くMetal Machine Musicに聴こえる演奏力は驚異的である。終盤にはルー本人も登場しエレクトリック・ギターでの競演も行っている。CDとDVD(リージョン・フリー)の2枚組みになっておりDVDには全編のライブ映像とルーのインタビュー(25分、字幕無し)が収録されている。


Hudson River Wind Meditations 2007年 評価 : 5/10
Sounds True M1117D (2007, 1CD, US)
ルーが自身の瞑想とタイ・チ(太極拳)のBGM用に作った音楽を 偶然耳にした友人がコピーを欲しがったことをきっかけとしてよりアルバムとしてリリースしたもの。全編、風や波のせせらぎを連想させるドローン音が持続し、集中してきいていると時間が引き伸ばされたような感覚にとらわれる。なお、ジャケットのハドソン川の写真はルー本人が撮影したもの。


Animal Serenade
アニマル・セレナーデ
2004年 評価 : 8/10
WPCR-11819/20 (2004, 2CD, Japan 歌詞対訳付)
ベスト盤「NYCマン」発売に伴っての2003年ワールド・ツアーはその内容の奇抜さと話題性において過去のいかなるルーのライブに比べても際立ったものとなった。まず前回来日時のノーマルなバンドからドラムを省き、女性チェロ奏者と男性コーラス、さらにダンサーとして太極拳の師範(ルーの個人的なインストラクターでもある)を加えた編成でVU時代を含む過去から現在までのレパートリーを幅広く披露という事前情報だけで多くのファンの度肝を抜いた。この編成での来日公演の印象としても横一列に鎮座したメンバーと太極拳のマスターの舞踏のビジュアル面での強烈さにめまいがするほどであったが、今回のツアーの置き土産と発表された本ライブ盤(録音はLA)を聴くと淡々と演奏される時代を超えた名曲の数々は変化球と見せかけて実は直球勝負であったことが分かるだろう。

・ 本作と同時期のライブ映像が"Spanish Fly : Live In Spain" としてリリースされた。



Le Bataclan '72 2003年 評価 : 7/10
PILOT193 (2003, 1CD, UK, Limited Edition)
「American Poet」に続いての、有名ブートレッグの公式発売盤は1972年1月29日、パリでのルー、ジョン・ケイル、ニコによるジョイント・ライブ音源。既にブートではかなりの高音質版が出回っていたのだが本作ではアンコールのAll Tomorrows Partyを加えての完全版でのリリースとなった。古くから映像版も出回り、もはやファンには定番となってるバタクラン公演ではあるが、完全に硬直した会場の空気を漂う覚めたルーの歌声、ケイルの直情、ニコの妖気とVU解体後三者三様のキャリアを成就させつつあった彼等の一瞬の再会を記録した奇跡的なライブ録音であるのは間違いないだろう。

・ デジパック限定盤にはPale Blue Eyes, Candy Saysのリハーサル音源を追加収録。本編と異なり音質はかなり厳しい。

NYC MAN
NYCマン ヒストリー・オブ・ルー・リード
1967-2003
2003年 評価 : 8/10
BVCM-37400-1 (2003, 2CD, Japan 歌詞対訳付)
ルーのベスト、編集盤の類は数え切れないほどあるが、ルー本人が編纂、サウンド・プロダクションに協力した本作は2003年時点での決定盤といえるだろう。VU, ソロから厳選された2枚組み31曲は彼の膨大な作品群のほんの一部ではあるもののルー・リード入門編または熱心なファンの箸休めとしては充分なボリューム。いずれも既発アルバムからの選曲で未発表曲等は無いのだが懐古趣味を廃したハイパーなリマスタリングはオリジナルとの差別化と言う点でも好感の持てる仕上がりになっている。

The Raven
ザ・レイブン
2003年 評価 : 7/10
WPCR-11435 (2003, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
48373-2 (2003, 2CD, US, Limited Edition)
作家、詩人として著名なエドガー・アラン・ポーを題材に詩の朗読と音楽で構成されたアルバム(限定版2枚組、ダイジェスト版としての1枚組の同時発売)。ミュージシャン、俳優と多数のゲストを迎えており、通常のルー個人の作品とは異なってルーが裏方に徹している場面も多いがこのアルバムの出発点が2001年に舞台で上演された作品「POEtry」であることを考えれば自然なことではあるだろう。楽曲、サウンドも今までのルーのスタイルを上手く活用した内容で正に力作ではあるが、アルバムの中で詩の朗読部分がかなり重要な地位を占めるにもかかわらず対訳付で発売されたのは音楽中心のダイジェスト版だけで更に対訳も割愛が多く、余程の予備知識と英語力が無ければ、作品の全体像を把握するのは非常に困難。

American Poet
ライブ・イン・ニューヨーク’72
2001年 評価 : 7/10
MSIF-3835 (2001, 1CD, Japan 歌詞、
インタビュー部のみの対訳付)
2001年になって突如リリースされた1972年のライブ演奏を収めた作品。過去に散々ブートレッグとして出まわっていただけに熱心なファンにはお馴染みのウルトラ・ソニック音源ではあるが本作が初出となるルーのインタビューも収録しており音質、内容共に文句無しの決定版。時期的にはトランスフォーマー発表直後であり同作からも4曲披露されている。いずれの曲も後期VUのスタイルを受け継いだソリッドな演奏ではあるが饒舌なリード・ギターは後のR&R Animal/Lou Reed Liveを予見させる。曲目、演奏いずれも非常に聴きやすいライブ作品なので、ルー初心者の方にもオススメ。

ECSTASY
エクスタシー
2000年 評価 : 10/10
WPCR-10685 (2000, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
NEW YORK以降飛躍的に進歩し、ロック、又は歌詞といった枠組みを越えてルー以外には決して触れることすら出来ない領域まで到達しつつある恐るべき彼の詩世界と、飽くなきテクノロジーへの探求心の成果である自由でありながらも完璧にコントロールされたサウンドが一体となったルーの2000年を飾るにふさわしい力作。参加メンバーはここ十年でのベストメンバーとも言える顔ぶれで今回はさらにホーン・セクションを加え数曲で見事なアクセントを加えている。前スタジオ作同様、本作でも変幻自在なギター・サウンドの素晴らしさは勿論であるがアルバムを通じてドラム、ベースの活躍ぶりが凄まじくリズム楽器の限界を超えて時に「メロディアス」とさえ感じさせるほどだ。「タイム・ロッカー」への二曲を含めどの曲にも印象的なメロディ・ラインが与えられルーのボーカルも自信に満ち溢れている。ルーの全ソロ作品中、最も神秘的かつ猥褻な傑作。

・ 本作発表時のライブ映像が"Live At Montreux 2000" としてリリースされた。

Perfect Night Live In London
パーフェクト・ナイト

1998年 評価 : 9/10
WPCR-1966 (1998, 1CD, Japan)
知る人ぞ知る機材マニアであるルーがアコースティック・ギター用の特製アンプとそれをステージ上で耳障りなハウリングなしに大音量演奏できるシステム"フィード・バッカー"との出会いから生まれたライブ・アルバム。一曲目からVU時代の名曲、ロック・オペラ「タイムロッカー」からの新曲、70年代以来演奏されることのなかった隠れた名曲と、選曲も魅力的であるが、何よりも今までのアコースティック・ギターの常識を覆すような、くっきりとした力強いギターの音に驚かされる。近年のアルバムはどれも重厚なテーマを持ったものが多かったが、このアルバムに関しては余計な深読みはせずに、バンドのたたきだす強力なビート、ルーのギター、声から発せられるエネルギー、90年代最高のロックンロールを感じて欲しい。

Set The Twilight Reeling
セット・ザ・トワイライト・リーリング
1996年 評価 : 7/10
WPCR-590 (1996, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
ベースに80年代前半に「ブルー・マスク」「ライブ・イン・イタリー」といった名盤に参加したフェルナンド・ソーンダースが復帰しお得意のフレットレス・ベースを聞かせ、ドラムに2バスを使用するパワフルなトニー"サンダー"スミスを起用したアルバム。ルーのギターもトレモロ・エフェクトを使用したエレクトリック・ギター、アコースティックとシンプルながらもバラエティに富んだ音に仕上がった。バック・ボーカルにルーの現在の恋人、ローリー・アンダーソンが参加。

Between Thought And Expression
思考と象徴のはざまで
ルー・リード・アンソロジー
1992年 評価 : 8/10
BVCP-7204-06 (1992, 3CD, US/Japan 歌詞対訳付)
ソロ・デビュー以降 86年作ミストライアルまでの楽曲で構成された全45曲3枚組みベスト。ボーナストラックは8曲(完全な未発表曲は2曲)と決して多くないものの波乱万丈の70年代80年代前半を上手くまとめた選曲にはルー本人も関わっており、各国で乱造されている安易なベスト盤に手をだすよりも断然お勧めな内容。

・44ページのオリジナル・ページのブックレットに国内版には日本語版解説、オリジナル版解説対訳、歌詞・対訳を掲載した38ページのブックレット付。




(Metal Jacket)
Magic And Loss
マジック・アンド・ロス
1992年 評価 : 6/10
WPCR-4453 (1992, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
ガンで亡くなった友人に捧げられたアルバム。ラフな作りであったNew Yorkに対して本作は歪みのないギターサウンドを基調にして綿密に作り上げられた曲が並んでいる。運命と人生をテーマにして、人間の悲しみと冷静に向き合った作品。

・限定で重さ368グラムの鉄製デジパックのバージョンも発売された。

・本作発表時のライブ映像が"Magic and Loss : Live in Concert" としてリリースされた。

Songs For Dorella
ソングス・フォー・ドレラ
1990年 評価 : 7/10
WPCP-3455 (1990, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
ジョン・ケールと二人だけで作られたアンディ・ウォーホルへの追悼アルバム。キーボードとギターだけでライブ録音された音で、八十年代以降ウォーホルと絶交状態であったことに対する後悔と謝罪が綴られている。

・限定でベルベット製デジパックのバージョンも発売された。

・本作発表時のライブ映像が"Songs For Drella" としてリリースされた。

New York
ニュー・ヨーク
1989年 評価 : 10/10
25P2-2488 (1989, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
荒々しいギターのサウンドと強烈な社会的メッセージを打ち出し、「言うべき事を持った大人のロック」を完成させたアルバム。歌というより詩の朗読に近いボーカルスタイルを取り入れ、ルーがデビュー以降追求していた詩人としての彼のイメージを定着させた。また、100万枚の売り上げを記録するなど商業的にも成功した一枚。

・本作のCDはCD-グラフィックス仕様になっており専用のCD-Gプレイヤー又はPCのCD-Gソフトと対応ドライブで再生すると静止画像と歌詞が表示される。(米国盤/9 25829-2/とフランス盤/925 829-2/で確認済み。)

・アルバム発表時のインタビュー記事

・本作発表時のライブ映像が"The New York Album" としてリリースされた。

Mistrial
ミストライアル
1986年 評価 : 7/10
B20D-41008 (1989, 1CD, Japan)
サウンド的には前作の延長線上にあり、バックに打ち込みを多用したことからか一般にはあまり評価されていないアルバムだが、隠れた名曲「Tell It To Your Heart」や、社会的なメッセージを可能な限り過激に表現し、次作「ニューヨーク」への伏線となった「Original Wrapper」など決してあなどれない作品。

New Sensations
ニュー・センセーションズ
1984年 評価 : 7/10
BVCP-5023 (1990, 1CD, Japan)
96年来日公演でも演奏された「I Love You Suzanne」を初めとしポップなロックソング中心。楽曲のレベルが安定している時期なだけに、八十年代特有の音処理は今聞くと古臭いだけに感じられるのが残念。

Live In Italy
ライブ・イン・イタリー
1984年 評価 : 8/10
BVCP-2088 (1992, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
1983年9月にイタリアで行われたライブを収録。4ピースのシンプルな編成でVU時代の曲から当時の新曲まで違和感のない演奏が楽しめる。ルーの熱いヴォーカルもさることながら、クワインの切り裂くようなギター、ソーンダースの流れるようなフレットレス・ベースと、ライブ・バンドとして完成度も高く、特に後半Some Kinda Love以降の爆発ぶりは、正に圧巻。

・ 「Live In Concert」という別タイトル、別ジャケットの輸入CDが発売されているが内容は本作と同じ。
・ 9月7日のVeronaでのライブは映像も撮影されており、イタリアでは45分番組としてテレビ放映されたようだ。

Legendary Hearts
レジェンダリー・ハーツ
1983年 評価 : 8/10
BVCP-5022 (1990, 1CD, Japan)
前作とほぼ同じ路線で制作されたが、こちらの方がよりリラックスした印象をうける。このアルバム制作時、ロバート・クインとの関係が悪化していたためか彼のギターの音がミックス段階で小さくされてしまったようだ。このアルバム発表時のライブが "Live In Italy", "A Night With Lou Reed(ビデオ)" として発表された。

The Blue Mask
ブルー・マスク
1982年 評価 : 9/10
BVCP-2089 (1992, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
RCAに復帰後の第一作目。七十年代のソロ作品に共通していたヒットを意識してのアルバム作りから解放されてシブイ通好みのミュージシャンという現在まで続くルーのイメージを確立したアルバム。ギターにリチャード・ヘル&ザ・ヴォイドイズで活躍した名ギタリストロバート・クイン、ベースにジェフ・ベックとの活動歴のあるフェルナンド・ソーンダースをむかえて制作された。ギターとボーカルの一部以外ほぼ全編リハーサルなしで録音され、余分なものをいっさい取り除いたサウンドのなかルーのボーカルは落ち着きと力強さをもち、曲、歌詞共に完成度の高いロックアルバム。

Growing Up In Public
都会育ち(まちそだち)
1980年 評価 : 6/10
BVCA-2017 (1992, 1CD, Japan)
前衛的過ぎた前作の反省からか本作では三分間前後のポップなロックに方向修正している。歌詞の出来の良さに対して楽曲の弱さが気になる。「Teach The Gifted Children」では、「Take Me To The River」を大胆に引用。

The Bells
警鐘(けいしょう)
1979年 評価 : 4/10
BVCA-2016 (1992, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
当時のルーはそのヴォーカル・スタイルにおいて転換期にあり、それが意識的なものか年齢的なものなのかは判らないが、このアルバムでの妙に引きつったような歌声はかなり聞き苦しく感じる。曲にしてもあまり良いとは思えないが歌詞の面では、ルー本人が自分の作品のなかで一番気に入っているという "The Bells" が収録されている。

Live − Take No Prisoners
テイク・ノー・プリズナーズ
1978年 評価 : 8/10
BVCP-7001-02 (1992, 2CD, Japan 歌詞対訳付)
「Street Hussle」発表後1978年5月ニュー・ヨーク、ボトム・ラインでのライブ。通常のバンド編成にホーン、キーボード、黒人女性のコーラスを加えた大所帯のバンドでの演奏。ここでのルーは通常のギターと数曲で当時まだ珍しかったギター・シンセを使用し、アドリブでレコード会社や評論家達への悪口を放送禁止用語を連発しながら歌うラップ調のボーカルを披露。オリジナルよりも極端に引き延ばされた楽曲においては単調さ否めないもの、肉厚なサウンドに乗るルーのスリリングなボーカル・パフォーマンスは絶品。終曲Leave Me Aloneでのバンドの演奏が最高潮に達した時に発せられるエネルギーは強烈。

・ 国内盤の歌詞対訳は聴き取り不可能の為、語りの部分は省略されている。(楽曲のオリジナル歌詞を掲載)

Street Hassle
ストリート・ハッスル
1978年 評価 : 10/10
BVCA-2015 (1992, 1CD, Japan)
11分に及ぶ組曲"Strret Hussle" (ブルース・スプリングスティーンが一部分を歌っている)を収録した、際どい歌詞とヘビィなサウンドが刺激的な、70年代後期のアリスタ時代を代表する傑作。ブラック・ミュージックへの傾倒とパンクからの影響がうまく作用し、パフォーマーとしてのルーの才能が遺憾無く発揮されている。

・ Shooting Star, Leave Me Aloneは77年4月、ドイツでのライブ録音。
・ 本作からThe Bellsまでのライブ録音の曲においてステレオ・バイノーラル・サウンド(SDS)による録音方式が採用されている。これは人の頭を模したマイクスタンドの両耳部分にマイクを取り付けることによって独特の臨場感のあるサウンドで収音できる方式。但しヘッドフォンを使用して聴かなければ効果はあまり無いようだ。

Rock And Roll Heart
ロックン・ロール・ハート
1976年 評価 : 6/10
BVCA-2014 (1992, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
RCAからアリスタ・レコード移籍後、第一弾の作品。ルー・リードを象徴するようなアルバムタイトルとは裏腹に、かなりポップなサウンド。 楽曲も平均以上であるし、決して"ハズレ"のアルバムではないのだが、売れ筋を意識しすぎたようなサウンドのためか、あるいは前後のアルバムが良すぎたためか、今一つぱっとしない印象を受ける。

Coney Island Baby
コニー・アイランド・ベイビー
1975年 評価 : 10/10
BVCP-5021 (1990, 1CD, Japan 歌詞付)
「トランスフォーマー」で見せたポップセンスを、よりロック寄りに発展させた作品。 当時の恋人レイチェルとの生活のなかで生まれた甘くも刺激的なラブソング が中心。ボブ・キューリック(元KISSのブルースの実兄)のツボを押さえたギターと「キックス」、「コニー・アイランド・ベイビー」で聞ける "話すように歌う" ルーのボーカルがアルバムを成功に導いた。R&Bを主体にした一流のポップ・アルバムとしても評価できる。

・2006年の再発版からシングルB面曲の"Nowhere At All"を含むボーナストラック6曲が追加された。

Metal Machine Music
無限大の感覚
1975年 評価 : 0または10/10
BVCP-2090 (1992, 1CD, Japan)
突然発表された、全編ギター・ノイズだけを収録したアルバム。曲や歌詞といったものは一切なくただノイズの轟音だけで、当然レコード会社や評論家から猛反発をうけた。なぜルーがこのような作品を発表したかは不明だが、周囲からの売れ線アーティスト的な扱いに対するルー自身の不満があったのではないだろうか。

Lou Reed Live
ルー・リード・ライブ
1975年 評価 : 7/10
BVCP-5020 (1990, 1CD, Japan 歌詞付)
1973年のBerlin発表後のライブ音源。先に発表された「Rock and Roll Animal」がライブの後半で、こちらが前半。サウンドは「Rock and Roll Animal」と同様ハードロックだがソロ以降の曲が中心なのでそれほど違和感はないだろう。バックバンドの音に押されまくって、過熱するルーのヴォーカルが聞ける。

Sally Can't Dance
死の舞踏
1974年 評価 : 7/10
BVCP-5019 (1990, 1CD, Japan 歌詞付)
当時の流行であったR&Bを意識したポップなアルバム。商業的に成功し、ルーにとって唯一のトップ10アルバムとなったが、ほとんどプロデューサーまかせでルー本人はサウンド作りにはほとんど関与していないようだ。しかしながら、自らの電気ショック療法の体験を歌った "Kill Your Sons"、アコースティック・ギターによる弾き語りである"Billy" は聞いておきたい。

・ 2001年のリマスター再発盤(国内盤は2003年)には未発表曲Good TasteとSally Can't Danceのシングル・バージョンがボーナス・トラックとして追加収録された。

Rock 'n' Roll Animal
ロックン・ロール・アニマル
1974年 評価 : 6/10
B20D-41007 (1989, 1CD, Japan)
1973年10月21日ニュー・ヨーク、ハワード・ステイン・アカデミーでのライブ。後に発表されたLou Reed Liveがライブの前半で、こちらが後半。フュージョン風のダサいイントロに始まりハンター、ワグナーの自己中心的なツイン・リードを前面に押し出した演奏。大半がVU時代の曲だが、オリジナルに馴染んだ者にとっては徹底して編曲された演奏は全くの別物と聴こえるだろう。オリジナルは5曲入りだが2000年の新装盤ではHow Do You It Feels、Caroline Says1の2曲が追加収録され、特に「シャラップ!」と客を一喝して始まるキャロライン・セッズは異様な迫力でルーが吼えている。そもそもロックが「嫌われ者の音楽」であることを再認識させてくれる見事なパフォーマンスだ。(1/2008)

・ アルバム発表時のインタビュー記事

Berlin
ベルリン
1973年 評価 : 7/10
R28P-1107 (1987, 1CD, Japan)
1stソロアルバムに収録された「Berlin」を発展させて、ドイツのベルリンを舞台にしたストーリーを基に制作されたコンセプト・アルバム。アリス・クーパ を手がけたハードロック界の有名プロデューサー、ボブ・エズリンによるドラマティクな サウンドとルーの退廃的なストーリーが話題になった。ややオーバー・プロデュースぎみに感じられるが、歌詞は傑出した出来で前作に続いて評価の高いアルバム。イギリスのグラム・ロックの波に乗って再出発したルーだがここではサウンドとファッション共によりアメリカ的な過剰さ移行しているのが興味深い。(1/2008)

Transformar
トランスフォーマー
1972年 評価 : 10/10
R28P-1106 (1987, 1CD, Japan)
デビッド・ボウイとミック・ロンソンのプロデュースによる2nd。かなりボウイ色の強いアンニュイなアレンジで荒さの目立つ前作とは打って変わって上品な仕上がりとなった。曲のグレード、サウンドいずれも完成度が高く、"Walk On The Wildside" はルーにとっての最大のヒット曲。当時のボウイは傑作「ジギー・スターダスト」リリース直後の乗りに乗った時期で(本作のリリースはその半年後)彼の神がかり的なプロデュース・センスはルーをアンダーグラウンドのヒーローからメジャー・シーンのスターに生まれ変わらせた。本作における都市の冷気を漂わせる繊細な曲調とゲイ、ドラッグといった強烈なイメージ、そしてボウイの後を追うようにグラマラスなファッションに身を包んだルーは一時的ではあるがロック・スターの道を突き進むことになる。

・アルバム録音時のインタビュー記事
・本作制作時の回顧ドキュメンタリー映像が「Classic Albums, Transformer」として2002年に発売された。
・2002年の再発盤(国内盤は2003年)より弾き語りデモ2曲(Hangin' 'Round, Perfect Day)と隠しトラックが追加収録された。
CD再発の変遷(ジャケットと帯)

Lou Reed
ロックの幻想
1972年 評価 : 6/10
BVCP-2065 (1992, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
二年間の休養を経てのソロデビュー作。 VU時代の曲(当時は未発表だった)の再録をふくめてかなり派手なアレンジが施されている。ソロ・デビュー以降ベルリンまではレコーディングの拠点をイギリスに移し、かつてのVUとは異なるより広がりのあるサウンドを目指していたことが明確に示されている。当時スタジオミュージシャンとして活動していたギタリストのスティーブ・ハウ(イエス)が参加していたりと、かなり堅実な音作りで本気でヒットをねらっていたようだ。








The Velvet Underground







Bootleg Series Volume 1
The Quine Tapes
2001年 評価 : 8/10
UICY-7044-6 (2001, 3CD, US/Japan)
1969年にVUが行ったライブは数回が録音されており、それらは73年に"1969 Live"として公式発表されたのだが、その他にも多くの演奏が1人の熱心なファンによって客席からカセット録音されていた。そしてそれらのカセットの中から録音者本人の手によって特に優れた演奏が4時間のオープン・リール・テープにまとめられた。その後、現在までそのテープは録音者の個人的なコレクションとして保管されて居たのだが32年を経た今日、3枚組CDとして初めて公開され、その熱心な1人のファンこそが80年代にルーと活動を共にしたギタリスト、ロバート・クワイン氏であることも多くのファンを驚かせた。Bootleg(海賊盤)と銘打っているだけあって音質は良くないのだが、それを承知の上で聴ける人ならば、過去のライブ作品で捕らえきれなかったVUの本当の凄さを本作から感じ取れるだろう。

・「Rock 'n' Roll」は"Live 1969"に収録のものと演奏は同じではあるが、本作はオーディエンス録音(モノラル)であり、"Live 1969"のテイクはライン録音(ステレオ)の可能性が高い。


Loaded : Fully Loaded Edition
ローデッド(スペシャル・ヴァージョン)
1997年 評価 : 8/10
AMCY-2087-8 (1997, 2CD, US/Japan 歌詞対訳付)
1970年発表のV.Uの実質的なラストアルバム「ローデッド」に未発表テイクとデモ録音を加えたCD二枚組。過去のバージョンではルーが脱退した後にダグとプロデューサーの手によってルーのボーカルがダグのものに差し替えられたりルーの意図しないパートが付け加えられていたが、今回やっと本来の姿に近い形でディスク2に収められた。一部ボックスセットと重複する曲があるがボーナストラックも聞きごたえがある。


Peel Slowly And See
ピール・スローリー・アンド・シー
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・ボックス
1995年 評価 : 7/10
POCP-9510/4 (1995, 5CD, US/Japan 歌詞対訳付)
バンド結成直後65年7月のリハーサルからルー脱退直前の70年8月のライブまでVUの軌跡を追った全74曲5枚組ボックスセット。オリジナル・スタジオ4作品からの全曲に未発表曲、別テイク、ライブ等を加えた内容は相当なボリュームで(95年時点での)正に集大成的作品。しかしながら年代重視で構成された曲順、バラつきのある音質もあって通して聴くには向かないので初心者にはあまりお勧めできない。




(2disc Version)



(1disc Version)
LIVE MCMXCIII
ライブ1993
1993年 評価 : 8/10
WPCP-5648/49 (1993, 2CD, Japan 歌詞対訳付)
9 45465-2 (1993, 1CD, US)
誰もが有り得ないと信じていたオリジナル・メンバーでのVU再結成が現実となったのは1990年6月15日アンディ・ウォーホル追悼イベントでの出来事であった。この時Heroin 1曲のみの演奏であったが、それと前後して「Songs For Drela」でのルーとケイルの共演、90年夏のモー・タッカーをドラムスに迎えてのルーの来日公演(1日のみのルーとケイルのみのSongs For Drela公演も有り)とメンバー間の距離が急速に縮まった90年だが、その後入念なリハーサルを経て念願の本格的な再結成ツアーが実現したのは93年6月のことであった。本作はフランス公演(6/15,16,18)での演奏で新曲1曲を含むセットリストの全曲を収録している。VU以降長年のソロ活動を経て培ってきたスタイルを踏まえて再びVUと対峙するルー、ケイル組と25年前そのままのタッカー、モリソン組の対比も露骨ではあるが出てくる音はやはり本物のVUのサウンドに他ならない。ソロ以降も数え切れないほど演奏されたVU代表曲満載ではあるがここでのルーの歌声が最も誇らしく聴こえる。その後のルー。ケイル間の不和、さらにモリソンの急逝によりVUは再び伝説の中に消え行くことになった。

・ 映像版では同じくフランス公演から15曲を収録している。
・ 同時発売でジャケット色違い(紫)の10曲入り1枚組みバージョンも発表された



Another View 1986年 評価 : 7/10

P28P 25082 (1988, 1CD, Japan)
前作「VU」の続編として登場した編集盤の第二弾。前作と同じ時期の未発表曲集であるが、四曲がジョン・ケール時代の音源となり、当然ながら実験的要素の強い印象をうける。2ndから3rdへのサウンドの変化を知る手がかりとなるだろう。このアルバムの目玉は2バージョン収録された「ヘイ・ミスター・レイン」に尽きるだろう。


VU 1985年 評価 : 8/10

P33P 25037 (1987, 1CD, Japan)
三作目発表の前後1968年から69年にかけてにVUは十数曲をレコーディングしたが当時のレコード会社との対立、移籍騒動のうちにそのほとんどが発表されることもなくその後二十年近く忘れられた存在となったが、八十年代になって何度目かのVU再評価に応えて倉庫に眠っていたテープが発表されたのがこのアルバム。半分近くはすでにルーのソロアルバムで発表された曲であるが、それらは同じ曲と思えないほどまったく異なるアレンジが施されている。このアルバムには編集物にありがちな散漫さや、いい加減なところを微塵も感じさせずVUのオリジナル・アルバムの一枚として認めるに値する作品。二曲がジョン・ケール時代の音源。


1969 Velvet Underground Live
With Lou Reed
1974年 評価 : 9/10

PHCR-4150 (Vol.1 1993, 1CD, Japan 歌詞付)
PHCR-4151 (Vol.2 1993, 1CD, Japan 歌詞付)

三作目発表後、ダグ・ユールが加入してからのライブ。1969年後半に行われたアメリカツアーからサンフランシスコのライブハウス The Matrixでの11月の公演が複数回録音されそこからの15曲にテキサスのライブハウス End Of Cole Aveでの10月19日の公演からの4曲が収録されている。 スタジオ作品よりもスローで落ち着いた3rd以降のサウンドで演奏されている。ルーの伸びやかなヴォーカルが心地よく、バンドの円熟期をとらえたアルバムといえる。

・本来アナログ盤二枚組で発表されたのだがCD化に際してVol.1、Vol.2のバラ売りになり、さらに2001年の国内盤再発では再び2枚組の仕様となった。
・「ヘロイン」(vol.1)、「アイ・キャント・スタンド・イット」(vol.2)はCDになってからのボーナストラック。
・ 国内盤CDでは、米盤CDとは別のデジタル・マスターが使用されておりに聴き比べると日本盤の方が明らかにノイズが少ない。


Squeeze 1973年 評価 : 6/10
現在ではルー脱退後VUは自然消滅したこととなっているが、実際にはダグを中心に大幅にメンバーを変更して1973年末ごろまでライブ活動を続けていたようだ。本作はダグがVU名義で73年2月にイギリスで発表した「忘れ去られた」ラスト・アルバム。全ての楽曲、演奏はダグの手によるもので、「Loaded」で垣間見られた彼の明らかに西向きのポップ・センスが発揮されている。ダグのソロ作として捉えれば決して悪くはないが、やはり本作をVUの名で発表するべきではなかった。


Liva At Max's Kansas City 1972年 評価 : 6/10
18P2-2855 (1989, 1CD, Japan 歌詞対訳付)
R2 78093 (2004, 2CD, US)
1970年8月23日、ルーが引退を決意し、VUを脱退したまさにその日の歴史的なライブ。元々は、単なる記録用に客席からモノラル録音されたテープがレコード会社との契約を満たすために使用されたものなので、音質はブートレッグ並み(最古の公式ブートレッグとも言える)。産休のために一時バンドを離れていたモー・タッカーに変わり、「ローデッド」にも参加したダグの弟、ビリー・ユールがドラムを叩いている。ドラムが変わっただけでこれほどバンドのサウンドが変わるのかと言う驚きと同時に、モーの唯一有無のドラム・スタイルがVUにとっていかに重要であったかということを痛感させられる。 もう一歩でバラバラになりそうな演奏に、半ばヤケクソ気味に歌うルー。客席にいたであろうモーはどんな気持ちで観ていたのだろうか。

・2004年の再発版では7曲を追加収録し、2セット行われた当日のライブからの17曲2枚組みでのリリースとなった。音質の向上はさほどでもないが曲間のカットが最小限に抑えられているのでより当日のドキュメントとしての価値は向上している。


Loaded 1970年 評価 : 7/10
AMCY-622 (1993, 1CD, Japan)
アトランティックに移籍後のVUラスト・アルバム。制作当時、モー・タッカーは出産を控えて一時休養のためレコーディングに参加しておらず、ルーも既ににバンドに対する情熱は冷め切っていた。そんな状況でありながら「ロックン・ロール」、「スウィート・ジェーン」という二つのロック史に残る名曲を収録したこのアルバムは彼らの代表作になるはずであった。しかし、録音終了後、ルーが脱退した後に他者の手によってアレンジ及び曲順に、当時のポップ・チャートを意識したアルバムにすべく手が加えられてしまった。もちろんアルバム発表時、評論家に絶賛されることも、ヒットチャートに登場することもなく終わった。

・ ブックレットには以下のような実際と異なる表記がある
- Moe Tucker - Drumsとあるが実際にはモーはレコーディングには一切参加していない。
- ダグとスターリングのクレジットにSong Composition(作曲)とあるが全ての楽曲の作詞作曲はルーによるもの。
- Sweet Jane及びNew Ageの曲時間表記が大きく間違っている。実際は表示よりかなり短い。


The Velvet Underground
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドIII
1969年 評価 : 10/10

P28P 25075 (1988, 1CD, Japan)

ジョン・ケールに変わってスタジオミュージシャンであったダグ・ユールが加入しての3rd。前作とは打って変わって洗練されたメロディーと繊細なサウンドでルーのメロディーメーカーとしての才能がいかんなく発揮された内容。これまでのVUの定番であったノイジーなギターサウンドがほとんど聞かれなくなったが、この変化に関して一般にファズなどの機材を録音直前に盗まれたことがその理由と言われているが、アルバムを聞くとそれよりもむしろ、作曲段階からルーはこういったサウンドを意図していたと思われる。ジョン・ケールが脱退した時点でそれははっきりしていて、そのためにポップな音作りに精通し、コーラスのできるダグ・ユールを後任に選んだのではないだろうか。

・ ボックス・セットPeel Slowly Seeにおいては全曲ルー本人によるクローゼット・ミックスが採用されておりCD化以降のVal Valentin氏のミックスより丸みのあるサウンドが特徴で、さらにSome Kinda Loveがテイク違いとなっている。アルバム発売時は米盤がクローゼット・ミックス、英盤がヴァレンティン・ミックスとなっていた。





(英盤)
White Light/White Heat
ホワイト・ライト / ホワイト・ヒート
1968年 評価 : 10/10

P33P 25041 (1987, 1CD, Japan)

ヒステリックなギターの轟音と前衛的な詩が衝撃的な2nd。実験的要素が強く、VUの全アルバムのなかで最もジョン・ケール色の強く出た作品。当時ライブで行っていた延々と続くノイズ演奏の成果が表われている。60年代ロックの最深部を17分半に封じ込めたSiter Rayでの目くるめく爆音の嵐は全てのロック愛好家に処方されるべき劇薬だろう。しかしながら、音楽的絶頂とは裏腹に一つのバンドに二人のリーダーがいるような状況は長く続かず、バンド運営上の対立及び、女性関係でのトラブルが原因となって1968年9月ボストンティー・パーティーでのライブを最後にルーはジョン・ケールをバンドから追い出した。

・イギリスではジャケット違いで発売された。


Nico : Chelsea Girl
1967年 評価 : 8/10

P28P 25076 (1988, 1CD, Japan)
ニコのファースト・ソロ・アルバム。VUのアルバムではないがルーとケールがアルバムの製作に参加し、楽曲、サウンド共にVUとの共通点が多いのでVUファンならば必ず聴くべきアルバム。魂の極北を見渡すかのようなニコの物憂げなボーカルは絶品。


Velvet Underground and Nico
1967年 評価 : 9/10

P33P 25027 (1987, 1CD, Japan)
UICY-7112/3 (Deluxe Edition 2002, 2CD, US/Japan 歌詞対訳付)

ニューヨークの人気のないローカル・バンドに過ぎなかったVUがアンディ・ウォーホールに見出されて彼の援助のもとにドイツからやってきたモデル兼女優のニコを指示されるがままにバンドに加えて発表したデビューアルバム。ウォーホールがジャケットを提供しプロデュースを担当してはいるが音楽的には全く関与してはいない。メランコリックさとノイジーさがうまくブレンドされ、過激な歌詞の内容と共にVUの魅力が凝縮された作品。発売当時は一部のマニアに高く評価されただけで商業的にはまったくの失敗であったが二十世紀のベスト・アルバムの一枚に数えられるであろうアルバム。

・ 2002年のデラックス・エディションではアルバムのステレオ及びモノ・ミックスにシングル・ヴァージョンの4曲とニコの「チェルシー・ガール」からの5曲を加えた2枚組デジ・パック仕様で再発された。

・ニコの歌うAll Tommorow's Partiesは オリジナルでは声が二重に聞こえるダブル・ヴォーカル・トラックであるが、初期の再発CDでは 別ミックスのシングル・ヴォーカル・トラックが収録されている。そして、1996年以降の再発盤はすべてダブル・ヴォーカルとなる。

・2002年にNYで偶然発見されたアセテートのテスト盤には本作の初期バージョン9曲が収められていた。その音源はネット・オークションで高値で落札された後、2007年に"UNRIPENED" (XTVCD-122)としてリリースされた。同じく本作のアセテート盤としてはモー・タッカー所有のバージョンが確認されている。
VU年表