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Lou Reed : Interview 1972

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1972年 「ルー・リード (1st)」発表後 「トランスフォーマー」録音時

色とりどりにつぎはぎしたポップな服を着、濃いサングラスをかけてルーリードは現れた。「サングラスをかけたまま話すのが気になるか?」と尋ねるので、「いいえ」と答えると、「凄く気にする人もいるんだよ。まあ、そのためにサングラスをかけているんだけどね」と言った。彼に最初に出会ったのはレインボーシアターで行われたデビット・ボウイのコンサートだった。楽屋で彼はデビットの手を取って「昨晩の君のショウはファンタスティックだった。そして今夜はグレートだ。」と言った。 インタビューを始める前に 「RCAからのソロアルバムによって、あなたのレコードが初めて日本で発売されるんですよ」と告げると 「やっと歴史がスタートするんだね」という言葉が返ってきた。

・ まず初めに生まれた場所と生年月日を教えて下さい。

「ニューヨークのブルックリン。 いつ? それは問題じゃない。 だけど魚座の生まれだ。別に占星術を信じているわけじゃないけど星占いの本には魚座は永遠のドリーマーだと書いてある。それは確かに当たってるけれど他の星の人だってみんなドリーマーだ。そう思わないか?」

・ あなたが最初に接した音楽とか、特に影響を受けた人は?

「最初に聞いたのはデキシーランド・ジャズだった。1930年代の音楽だ。それからはあらゆる種類の音楽を聞いた。ハード・ロック、ソフト・ロック、バラード、ミュージカル、それにコミック・ソングなんかも。誰もが僕に影響を与えたし、また、誰も僕に影響を与えなかった。」

・ あなたとアンディ・ウォーホルとの関係について教えて下さい。

「彼に初めて会ったのはヴィレッジのクラブに出演していた時だった。僕たちがそこの契約が切れる前の晩に友達がウォーホルを連れてきてくれたんだ。彼は、映画館で一週間の仕事がある、自分は映画を映すからその前で好きなように演奏してくれればいい、君達をライトで演出するけどどうか、と言った。そして僕が承知したこれがきっかけだ。彼が僕の音楽に影響を与えたかって? さあ、それは良く分からない。少なくともVUの最初のアルバムに入って曲は彼に出会う前に書いたものだ。その後、曲の題材に関してアドバイスしてくれた。彼がパラノイア(偏執狂)について書いたらどうかと言うから。僕はパラノイアの曲を書いた。」

・ VUの三枚目のアルバムが前の二枚と異なっているのはあなたがアンディから離れたからですか?

「そう、それにジョン・ケイルもニコもいなくなったから。それで自分の思い通りに出来た。あの『シスター・レイ』の入っている二枚目のアルバムで、僕はある方向に行けるだけ行ってしまったような気がしたので、全く別の方向へ進む時だと決心したんだ。」

・ 三枚目のアルバムに入っている『ジーザス』という曲であなたが言おうとしたことは?

「あれは問いかけなんだ。誰かが自分に向かって問いかけている。”僕には何が出来るのだろうかと”。『Jesus help me find my proper place』(どうか僕のいるべき場所を教えて下さい)その言葉どうりシンプルなんだ。しかし、おかしなことに、僕は悪い奴だとみなされていたから、人々はこれを痛烈な皮肉だと受け取った。本当は皮肉のつもりなんて全然なかったのに。」

(ここで彼は「それでぼくの心はひどく傷ついてしまった」と付け加えてから、「これはジョークだよ」と言って笑い出した。)

・ VUがコマーシャルなバンドにならなかった理由は?

「マス・アピールを持っていなかったからだ。それに、理由かはどうか分からないがともかく時流よりも先行していた。皆が今やっていることを僕らはあの頃やっていた。だから誰も僕らに注目しなかった。VUをやめたのは、僕にとって迷惑になってきたからだ。マネージャーにさんざん悪いことをされたし、僕は打ちのめされたみたいになって、しばらくは仕事が出来ない状態だった。そしてRCAと契約する前に清算しなければならないことが沢山あった。アトランティックとの契約を切るために、もう一枚のアルバム、あのライブ盤(Live at Max's Kansas City)の権利を彼らに渡さなければならなかった。」

・最初のソロアルバムをロンドンで作った理由は?

「ニューヨーク・シティから出て、全く新しいスタートを切りたかったからだ。僕が知っていた全てのものとの関係を断ち切ってね。あのアルバムの中の曲は、以前から僕の頭の中で作られかけていた。しかし、ただ無性にニューヨークを出たかった。」

・アメリカとイギリスのロックの違いについて何か感じましたか。

「ロックン・ロールについて言えば、アメリカとイギリスは一つの大きな国になってしまったみたいだ。かつてロックンロールはアメリカだけのものだった。しかし、今はむしろイギリスの方が支配力を持っている。アイディアもテクニックも、イギリスの方が進んでいる。そして、イギリスの連中の方が仕事熱心だ。自分が気に入ったものに対して、もっと一生懸命に働いている。」

・ アメリカといっても、イーストコーストとウエストコーストでは違うでしょう?

「勿論。 僕はウエストコーストのロックは嫌いだ。 ウエストコーストのロックはなんて言うか、つまり "Wishy - Washy" なんだ。 "Wishy - Washy"と言うのは、ちゃんと定まった視点(Point of View)を持っていないことだ。つまり、ものの見方に鋭い刃がないんだ。ウエストコーストのロックには何も起こり得ない。確かに、美しい歌は生まれている。しかしみんな同じミュージシャンを使うから、みんな同じ音になってしまう。ウエストコーストの奴等もメッセージを持っているじゃないかって? “ノー”だ。彼らは何も言うべき事を持っていない。僕の知っている限りでは。 何も持っていない者が何を言わねばならないのか。」

・ ではあなたは何を言いたいのですか?

「僕の言いたいことはみんなロックンロールにしてしまった。僕のレコードの中でね。インタビューでそれを言えるのなら、僕はレコードを作らないよ。その代わりにいつもインタビューばかりやっているだろう。」

・ あなたはロンドンが好き?

「とても、とても好きになってしまった。ロンドンへ移住しようかとさえ考えている。 多分ニューヨークには長く住みすぎたんだ。あれを、“住んだ”というのなら。帰りたくなることはないだろう。 僕がニューヨーカーの典型だってゆうことは自分でも知っている。 だからこそ離れたんだ。 僕はグループを変えたし、歌も変えた。あれもこれも変えた。今度は今まで変えなかったものを変える時だろう。」

・ 社会としてのアメリカとイギリスはどう違いますか?

「イギリスにひかれ始めているのは間違いないのだが、やはりアメリカと言う国は強大な力でのしかかってくる。 しかしアメリカは今ひどい病気にかかっているんだ。あそこで起こっていることは恐ろしい。 回復できるかどうか僕にはわからない。僕がそれを見守っていられるかどうかも確信が持てない。 僕自身が既に、それを当たり前のこととして受け入れられるだけその病気に感染してしまっているのだから。」

・ その治療法は?

「分からない。 ただ僕らミュージシャンは皆がそれを見つけようという意識を持って音楽を作るべきだ。勿論、政治も変えなくてはならない。それに僕たちは戦争をしている。あれは単なる人殺しにすぎない。本当に恐ろしい。それからニューヨークのスラム、この世の中にあんなにひどいものはない。 見たことの無い君には分からないかもしれないけど、ほんとにひどいんだ。それをどうしたらいいか、僕には分からない。僕に出来ることは、ただロックンロールのレコードをを作って、そこで言わねばならないことを全部言うだけだ。」

・ 新しい大統領に変わったことが 治療法になると思いますか?

「少なくともニクソンよりは良くなるはずだ。誰がやってもニクソンより悪くなることはないだろう。ウォレスは別として、ウォレスのようなひどい奴でも、現実に大統領になる可能性を持っているのがアメリカという国だ。彼でもあそこまで行けるんだ。沢山の人が病んでいながら、彼があんなに高く祭り上げられたということが、僕を脅かす。」

・ あなたの書く歌には時として一種のソフィスティケーションがあるでしょう。 20世紀初めの、例えば、フィッツジェラルドの小説が持っているようなフィーリングみたいなものが。

「確かにそうだ。しかし僕の歌には同時に、21世紀初めのフィーリングもあるはずだし、今現在のフィーリングもあるはずだ。つまり一人の人間から求め得る全てがあるはずだ。少なくとも僕は全てを出そうと努力した。 真剣に努力したんだ。」

・ あなたの考える21世紀は?

「それは素晴らしい、エキサイティングな時代だろう。人々はもっとずっと幸せになるだろう。特に性に関して。現在は人々の性に対する意識がちょうど変化しつつある時だ。それが変化し終わった時、人々は今までよりずっと健康になるだろう。」

・ 宇宙については?

「人間が宇宙へ出かけることによって、何か間違ったものを撒き散らして何かを破戒しなければいいが、と願うだけだ。僕は宇宙へ出かけていくことよりも、むしろ、宇宙をここ(頭を指差して)持って来たい。その宇宙とは、君の心を開いて、そこにより大きなスペースを作ろうとする態度のことだ。宇宙をここに持ってくる。それが人々をより健康にするだろう。お互いに戦いも断絶も無くなって。」

・ ところで、ある人はあなたの音楽にはキンクスのレイ・デイヴィスと共通したものがあるといっていましたが。それについてどう思いますか。

「それは、僕自身が、そうだとかそうじゃないと言える問題じゃない。しかし誰かかがそう言ってくれるなら、僕は誉めれたと思ってしまう。 なぜなら、僕は本当にレイ・デイヴィスが好きだから。」

・他に好きな人は?

「デビット・ボウイ。今、彼は僕のニューアルバム(トランスフォーマー)の制作を助けてくれている。このアルバムでは僕が今までやらなかったことを、色々やっている。 勿論、全部自作の曲だ。共演のミュージシャンは、クラウス・ブーアマンとかハービー・フラワーズとか。彼らはベストだ。デビットが彼らを選んでくれた。それから、ミック・ロンソンも、彼はピアノとギタ−を弾いている。僕もギターを弾き、歌い、バックでミックとデビットも歌う。レコーディングは後一、二週間で終わる予定だ。(このインタビュー当日も朝十時から六時のレコーディングを終えた後だった。)」

・ 今度は何について歌っているのですか?

「堕落した人間の歌、他人を傷つける人間の歌、メイキャップの歌、それからラブソングもある。 僕はいつも一枚のレコードに少なくとも、一つはラブソングを入れるのが好きだ。」

・ 堕落した人や男を愛する男についての歌はあなた個人の経験から生まれるのですか?

「必ずしもそうじゃない。それよりも僕の知っている人達のことを歌う方が多い。僕は自分自身のことはあまり書かない。他人になったふりをするんだ。つまり芝居みたいにね。」

・ 好きな作家や詩人は?

「T.S エリオット。 それからシェークスピアも大好きだ。 余りに当たり前な答えだと思うかもしれないけど、ほんとなんだ。僕はこういうまぎれもない人達が好きだ。 あと、ボードレールも。それから、多分聞いたことは、ないだろうがデルモア・シュワルツ (Delmore Schwartz) という作家も好きだ。」

・ 最後に日本で出た、あなたのソロアルバムのライナーにあった各曲の解釈について、異議はありますか。(事前にポール・ウィリアムス氏による日本盤のライナーの原文を読んでもらった)

「僕は誰の解釈にも同意する。歌の中に聴く人がそれぞれ自分を置けるようにしておきたい。空白のところを聞く人が埋めてくれて、一つの進路が開けてくるような歌が好きだ。特に決まった一つの道があるわけじゃないけど、確かに僕には、僕に見える道がある。しかし、君に見える道がそれと同じじゃなくてもいいんだ。君に見えるものは僕に見えるものと同じに正しいのだから。」